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コミュニティ/ピアによる倫理審査&学術出版の提案
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スライド概要
本スライドは,日本心理学会第88回大会 (熊本城ホール,9/6~9/8) 内で行われた公募シンポジウム「ここがヘンだよ研究倫理審査」にて発表した内容である。
研究を遂行する上では,学術論文はもとより,倫理審査,グラント申請など,さまざまな書類作業が生じる。本発表では,これらの作業を一元化する Trinity Review (三位一体査読, Mori et al., 2022) の提案と,それをさらに発展させて分散型科学の考え方を導入した ABCDEF出版 (Oka et al., 2023) の提案を中心に報告した。
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- 2024/9/8, 13:40- 日本心理学会第88回大会 於:熊本城ホール —公募シンポジウム:ここがヘンだよ研究倫理審査― コミュニティ/ピアによる 倫理審査&学術出版の提案 発表者:植田 航平 九州大学大学院人間環境学府, 博士後期課程1年 謝辞:本発表は,九州大学大学院未来共創リーダー育成プログラム(GIPAD),および JST次世代研究者挑戦的研究プログラムJPMJSP2136の支援を受けたものです。
- ECR (早期キャリア) 目線の「ここがヘンだよ」 ⚫ 所属機関や部局によって様式や求められる分量が異なる 例:九州大学大学院人間環境学研究院 と 九州大学基幹教育院で様式が異なる ⚫ (倫理審査に限らず)似た内容の文章を執筆する機会が多い ⚫ 所属部局に倫理審査委員会が無かったら? もしくは,在野研究者は…?シチズンサイエンス場面ではどうすれば…? ⚫ 倫理審査を含む査読のボランティア依存 2024/9/8 コミュニティ/ピアによる倫理審査&学術出版の提案 2
- 研究……,書類仕事が多い世界! 論文原稿 倫理審査書類 グラント申請書 2024/9/8 コミュニティ/ピアによる倫理審査&学術出版の提案 3
- 研究……,書類仕事が多い世界! 論文原稿 しかも, 倫理審査書類 重複部分が 多い…!! グラント申請書 2024/9/8 コミュニティ/ピアによる倫理審査&学術出版の提案 4
- Mori et al. (2022) の提案 論文原稿 グラント 申請書 2024/9/8 倫理審査 書類 コミュニティ/ピアによる倫理審査&学術出版の提案 5
- Mori et al. (2022) の提案 三位一体査読 (Trinity Review) 2024/9/8 コミュニティ/ピアによる倫理審査&学術出版の提案 6
- 三位一体査読 (Trinity Review) 2024/9/8 コミュニティ/ピアによる倫理審査&学術出版の提案 7
- 補足:査読付き事前登録論文 (レジレポ) 2024/9/8 コミュニティ/ピアによる倫理審査&学術出版の提案 Ref. https://www.cos.io/initiatives /registered-reports 8
- 補足:レジレポのいいところ ⚫ 第一段階の時点で査読を受けることができ,方法論的な妥当性up! この時点で序論,方法のセクションは固定になるため,研究者自由度を減らせる (池田・平石, 2016) p値hackingやHARKingといった疑わしい研究実践を防ぎ,研究の信頼性を高める (植田他, 2023) ⚫ 第一段階の査読を通過した論文は原則的採択 (in-principle acceptance) となる! 結果の方向性 (有意かどうかなど) を問わず,原則出版される 出版バイアスを減らすことにもつながる 2024/9/8 コミュニティ/ピアによる倫理審査&学術出版の提案 9
- 三位一体査読の一押しポイント 【研究者のリソース面】 ⚫ 研究上の(似た内容の)書類仕事の削減 【研究の質向上】 ⚫ 研究・査読・出版に至るプロセスの更なる透明化 ⚫ 倫理審査プロセスによって後から研究計画に逸脱が生じるリスクが減る 【研究業界全体への好循環】 ⚫ 既に走っているシステム(例:Peer Community In)と親和性がある ⚫ 在野研究者や所属機関に倫理審査委員会が無い研究者,市民科学者への門戸開放 ⚫ 将来的に,倫理審査のガイドラインやモデルを提示することに繋がる(かも) 部局間の差を低減できる(かも) 2024/9/8 コミュニティ/ピアによる倫理審査&学術出版の提案 10
- 三位一体査読の課題 ⚫ 誰がこのシステムを運営・管理するのか…? ⚫ 査読者へのインセンティブは…? ⚫ そもそも,中央集権的な出版システムの是非は…? etc. 2024/9/8 コミュニティ/ピアによる倫理審査&学術出版の提案 11
- ABCDEF出版 (Oka et al. 2023) の提案 ⚫ 三位一体査読をコミュニティでやるのはどう?という提案 Autonomous Bidding Ethical Credible 2024/9/8 Decentralized Funded コミュニティ/ピアによる倫理審査&学術出版の提案 12
- Decentralized/分散型とは? ⚫ 2020年前後から提案されつつある新しい科学の枠組み 従来の枠組み:大学や出版社,資金配分機関などの中央集権的構造 提案の枠組み:コミュニティによる意思決定で, 分散型科学 (Decentralized Science: Desci) を実現すること ⚫ 分散型科学/DeSci の背景 (Hamburg, 2021; 濱田, 2024) オープンサイエンスの動きに呼応 Web3 の技術 (ブロックチェーンなど) の発展 自律分散型組織 (DAO):コミュニティへの金銭的支援 ⇄ 意思決定権 2024/9/8 コミュニティ/ピアによる倫理審査&学術出版の提案 13
- ABCDEFのモデルと他のシステムの比較 自律分散型組織 Stage 1 Stage 2 2024/9/8 既存のレジレポ 三位一体査読 ABCDEF出版 学術面の査読 学術・倫理の査読 学術・倫理の査読 グラント審査 グラント審査 学術面の査読 学術面の査読 学術面の査読 コミュニティ/ピアによる倫理審査&学術出版の提案 14
- ABCDEF出版のシステム ⚫ 基本的な構造はレジレポのシステムに則っている ✓ オープンサイエンスの推進に寄与 ⚫ ブロックチェーン技術を用いた 投票による意思決定 Oka et al., 2023, F1000 Research ⚫ 査読者へのインセンティブ付与 ✓ 暗号通貨によって 2024/9/8 コミュニティ/ピアによる倫理審査&学術出版の提案 15
- 三位一体・ABCDEFの課題や限界点 ⚫ コミュニティ内において権力が偏ってしまう可能性 ⚫ コミュニティ内通貨(暗号通貨/トークン)の不安定さ ⚫ 不正アカウントの問題(偽アカウントや査読の偽造) ⚫ レジレポが合わない分野への対応(人文学寄りの分野など) ⚫ 査読者を評価するシステムの構築 ⚫ 所属機関での倫理審査が必須な研究・研究者に対する柔軟な対応 2024/9/8 コミュニティ/ピアによる倫理審査&学術出版の提案 16
- 倫理審査と学術出版システムのこれから ⚫ ペーパーワークを減らしたいという身近な視点と,学術システム全体の改善という 大きな視点の両側面から,研究や業界をより良くするための議論が存在する! ⚫ 機関や出版社に依存しない学術の在り方が広まりつつある プレプリントの隆盛や,Peer Community In などのコミュニティ運営による学術出版の発展 分散型科学 (Decentralized Science: DeSci) の登場 ⚫ 倫理審査や査読を含む学術出版システムをより良くするための議論を 学会や研究者コミュニティ内で継続していければ…! 2024/9/8 コミュニティ/ピアによる倫理審査&学術出版の提案 17
- 本発表の引用文献 Center for Open Science (n.d.). Registered Reports: Peer review before results are known to align scientific values and practices. https://www.cos.io/initiatives/registered-reports 濱田太陽 (2024). 分散型科学が拓く新たなエコシステム: DeSci. Tokyo が果たす役割 情報の科学と技術, 74(3), 86-91. https://doi.org/10.18919/jkg.74.3_86 Hamburg, S. (2021). Call to join the decentralized science movement. Nature, 600(7888), 221-221. https://doi.org/10.1038/d41586-021-03642-9 池田功毅・平石界 (2016). 心理学における再現可能性危機: 問題の構造と解決策 心理学評論, 59(1), 3-14. https://doi.org/10.24602/sjpr.59.1_3 Mori, Y., Takashima, K., Ueda, K., Sasaki, K., & Yamada, Y. (2022). Trinity Review: Integrating Registered Reports with research ethics and funding reviews. BMC research notes, 15(1), 184. https://doi.org/10.1186/s13104-022-06043-x Oka, T., Takashima, K., Ueda, K., Mori, Y., Sasaki, K., Hamada, H. T., ... & Yamada, Y. (2023). Autonomous, bidding, credible, decentralized, ethical, and funded (ABCDEF) publishing [version 2; peer review: 1 approved, 2 approved with reservations]. F1000Research, 12:877. https://doi.org/10.12688/f1000research.130188.2 植田航平・益田佳卓・佐々木恭志郎・山田祐樹 (2023). これからの 「再現性問題」 の話をしよう 電子情報通信学会誌, 106(4), 321-325. https://hdl.handle.net/2324/6779693 2024/9/8 コミュニティ/ピアによる倫理審査&学術出版の提案 18
- 研究メンバー (所属は論文公刊当時) Trinity Review ABCDEF出版 森 優希 [九州大学] 岡 大樹 [大阪大学,ATR,熊本大学] 高嶋 魁人 [九州大学] 濱田 太陽 [株式会社アラヤ] 植田 航平 [九州大学] 山形 方人 [Harvard University] 佐々木 恭志郎 [関西大学] 山田 祐樹 [九州大学] 2024/9/8 コミュニティ/ピアによる倫理審査&学術出版の提案 19
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